独自の試験片を用いて13種類の組み合わせを行い、in vitro、in vivoにおいて腐食試験を行い、金属の溶出。金属表面の劣化、周囲組織への影響を検索した。 <結果> 1.in vitro (1)アノード分極曲線を求めると単体ではステンレス鋼は他の金属に比べ、比較的低い電位で過不動態領域に入る傾向にあり、耐食性に劣っていた。 (2)静置浸漬ではFeイオンがTiとSUS316Lの組み合わせの場合に7mug/100mlの著明な溶出を認め、Ti-6AI-4VとSUS316L、SUS316L同士の組み合わせにおいて4mug/100ml、Co-CrとSUS316Lの組み合わせにおいて4mug/100mlの溶出を認めた。Coイオンに関してはCo-CrとTiを組み合わせた場合に4mug/100mlの溶出を認め、Niイオンに関してはSUS316L同士の組み合わせにおいて2mug/100ml溶出しているのを認めた。 2.in vivo 試験片を家兎背筋内に埋入後に形成された試験片周囲の被膜の厚さはCo-CrとTi-6AI-4Vのチタン合金側およびTi-6AI-4Vと、SUS316Lのステンレス鋼側において、被膜の厚さが経時的に軽度増加する傾向を認めた。また、純チタン同士に比べ、純チタンを他金属と組み合わせた場合に、埋入後12週および96週後におけるチタン側の被膜が厚くなる傾向にあった。さらに試験片を筋肉内埋入後、96週経たTiとSUS316Lの組み合わせにおいて明らかなFeイオンの溶出を認め、周囲組織に溶出したFeイオンを細胞内に取り込んだ貧食細胞を多数認めた。 以上の如く異種金属を組み合わせて生体に用いる場合には慎重でなければならないと考える。
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