研究概要 |
膝間接の靱帯再建術には、周囲の自家組織(腱、筋膜など)を用いる種々の手術法が考案されているが、良好な成績を維持するためには、再建しようとする靱帯の物理的・生化学的特性に最も適合した組織を選択することが重要である。このことから、膝関節の各種靱帯の組織学的検索、および主要な構成成分であるコラーゲンの生化学的検索を行った。 (結果)組織学的検索では、前十字靱帯(ACL)は、光顕像にて、靱帯長軸方向に走る太いコラーゲン線維束の間に、小さな線維束が縄のように捻れながら走っており、これらが靱帯の線維束を結合させていると推察された。生化学的検索では、各種靱帯のコラーゲン含有量は、内、外側々副靱帯(MCL,LCL)および後十字靱帯(PCL)では、乾燥重量の90-95%であるのに対し、ACLでは、83%と低値であった。またコラーゲン線維の可溶性を比較すると、可溶性コラーゲン量は、MCL,LCL,PCLでは1.5-2.2%にすがなかったが、ACLでは7.5%と多く、他の靱帯組織を上まわる弾性を有することが示唆された。次に各種靱帯のコラーゲン線維をペプシン処理した上で、尿素を含むSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行ったところ、いずれの靱帯組織からもI型コラーゲンのみが検出され、III型コラーゲンは認められなかった。次にコラーゲン線維をNaB3H4にて還元し加水分解後、AminexA-5カラムにて還元性架橋結合を分析したところ、ACLでは硬組織コラーゲンにみられるダイハイドロキシリジノノルロイシンが、MCL,LCLでは、他の組織ではまれなリジノノルロイシンが、またACLでは、ハイドロキシリジノノルロイシンが主要な架橋として存在しており、各種靱帯組織では、I型コラーゲンのみが合成されているにもかかわらず、コラーゲンの線維配列は、各々が異なった架橋結合により形成されており、各々の靱帯がわずかずつ異なった機能をもつために要求されたものと判断された。
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