研究の概要 我々は、麻酔時間6時間以上の症例を対象とし、肺胞マクロファージ(AM)の貧食能、およびサイトカインのgene expression(GE)の変化について検討した。揮発性麻酔薬群(A群)ではイソフルレンで、静脈麻酔薬群(以下B群)では、フェンタニールを用いて麻酔を維持した。 結果 (1)総細胞数、細胞分布:まったく変化がなった。 (2)凝集能:麻酔時間2時間以内では両群とも変化はなかった。しかし2時間以降ではA群に有意な凝集の増加がみられた。 (3)生存率:凝集のと同じように、麻酔時間2時間以内では両群とも変化はなった。しかし2時間以降ではA群に有意な生存率の低下を認めた。 (4)貧食能:麻酔時間2時間以内では両群とも変化はなった。しかし、2時間以降ではA群に有意な貧食能の低下がみられた。 (5)サイトカインのGE (1)Interleukin-1:両群とも麻酔4時間後にGEの発現がみられたが、A群に有意に多かった。 (2)Interleukin-6:両群とも変化はなかった。 (3)Tumor necrosis factor-alpha:A群では麻酔2時間後にGEの発現がみられ、以降B群と比較してもGEの発現頻度が高かった。 (4)Interferon-gamma:A群で、麻酔2時間後にGEの発現がみれ、以降B群と比較してもGEの発現頻度が高かった。 結論 以上の結果から、全身麻酔によって貧食の能低下やサイトカインの生成という生体にとって不利な反応がおこることが判明した。さらにこの反応は揮発性麻酔薬の使用により増悪することが強く示唆された。これは、全身麻酔が肺に炎症反応を惹起するという我々の仮説を支持するものである。
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