研究概要 |
本年度は脱血ショックおよび全脊麻ショック時の心拍・血圧リズム発現に関して、成犬において研究を行った。成犬をalphaクロラ-スによる麻酔下で、平均血圧(MAP)が50mmHgになるまで急速に脱血した。脱血終了後、MAPは揺らぎを伴って上昇した。また、心拍変動(HRV)も増加した。酸素消費量は脱血直後低下したが、MAP上昇に伴い徐々に回復した。この脱血、回復を繰り返すとHRV、MAPの揺らぎもMAPの上昇もおこらなくなり、酸素消費量は低値のままで、次第にMAPは下降し心停止となった。急速脱血モデルは、HRV、MAPがゆらぎ脱血ショックから回復しようとする脱血(1)期とHRV,MAPがゆらがずショックより回復しない脱血(2)期に分類できる。 脱血(1)期のHRV,MAPのゆらぎのスペクトル分析によりこの時期には交感神経系が関与している成分が増加していた。また、全脊麻下において同様の脱血モデルを作成するとHRV,MAPのゆらぎを生じず、MAPの上昇も見られなかったこのより、脱血(1)期のHRV、MAPのゆらぎは交感神経系の関与が強く示唆された。 脱血(2)期のHRV、MAPのスペクトル解析の結果、交感神経が関与している成分は脱血(1)期に比べ著明に減少していた。酸素消費量、炭酸ガス排泄はもはや増加しなかった。 HRV、MAPのゆらぎの増加ともに酸素諸費量、炭酸ガス排泄量の増加が血圧の低下しているときより脱血(1)期では見られ、脱血(2)期では見られない事より、HRVおよびMAPにゆらぎは血液の再分配等に関与しショック時の代償作用と密接に関連していると思われる。 HRV、MAPゆらぎスペクトル解析は血圧が維持されている出血性ショック代償期、即ち脱血(1)期の患者の有用な臨床的なモニターの可能性が本研究より示唆された。
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