研究概要 |
当初の計画では、痛覚過敏モデルとしてラットの坐骨神経結紮とNMDA作動薬の両者を用い、GABA、べンゾジアゼピン作動薬を用いて痛覚域値をどの程度上昇させるか行う予定であった。しかし、坐骨神経結紮ラット作製が困難なため予定を変更し、GABA作動薬であるmuscimol hydrobromide(Mus)がNMDAによる侵害受容亢進にどのように影響するか、ラットのtail-flick(TF)試験で調べた。腰部くも膜下腔にカテーテルを留置し、TF試験の対照値を測定後、2群に分け、1群には生理食塩液1muIOTAを投与し、5分後に2.2nmol/muIOTAのNMDA1muIOTAを、2群には5pmol/muIOTAのMus1muIOTAを投与し、5分後に2.2nmol/muIOTAnのNMDA1muIOTAを投与して測定した。2群とも2回目の薬液注入後5、10、15、30、45分後にTF試験を行った。TF試験は尾部に熱刺激を加え尾部を反応させるまでの時間を潜時として測定し(投薬後潜時-対照潜時)/(カットオフ時間一対照潜時)×100でmaximum possible effect(%MPE)を痛覚域値として求めた。カットオフ時間は8秒とし、群間はunpairedt testで検定し、p<.05のとき有意差ありと判定した。各群の%MPEは以下のようであった(mean±SE)。1群:5分-3±5,10分-12.5±6,15分-20.2±4,30分-10.7±5,45分-26.5±10,2群:5分39±6,10分30.8±4,15分28,5±3,30分29.5±4,45分21.5±6であった。両群間では全測定時点で有意差があった。MusはNMDAによって引き起こされる侵害受容亢進を抑制した。今回の実験より、NMDA受容体を介する侵害受容亢進に対してGABA作動薬がその抑制に有用であると考えられた。
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