研究概要 |
体内におけるロピバカインの薬物動態を、代謝産物を含めて検討した。まず、予備の実験としてラットを用いてリドカインの代謝を検討した。8-9週齢、体重250-300gのSD系雄ラットに対して、ペントバルビタールの腹腔内投与によって全身麻酔を行い、頭動静脈、大腿動静脈にカテーテルを入れた。大腿静脈のカテーテルよりリドカインを投与し、大腿動脈より経時的に採血した。血液の処理後、高速液体リロユトグラフによりリドカインおよび代謝産物を走量した。リドカイン投与中は、投与前に比べ心拍数が約15%低下したが、、平均血圧は投与前と変化なかった。本実験により、リドカインの最も主要な代謝産物はモノエチレグリシンキシリダイドであり、これ以外にベンゼン環が氷酸化された3´-ヒドロキシリトカインが生ずることが明らかになった。更に、予めラットに対してフェノパルヒタールやbeta-ナフトフラホンなどの酵素誘導薬を加えた場合は、リドカインの血中濃度は変化しないが、代謝産物の生成量は変化するという新たな知見が得られた。また、実験終了後に肝臓を摘出し、これよりミクロゾームを調製してin vitroでリドカイン代謝を検討したところ、ラット主体内での代謝と同様に、フェノパルヒタール前処置群でモノエチレグリシンキシリダイドの生成量が、betaナフトフラホン前処置群で3´-ヒドロキシリトカインの生成が増加する傾向が認められた。 次に同じモデルを用いてロピバカインの代謝について検討した。ロピバカインを1mg/kg/minの速度で10分間投与し、経時的に採血を行ってリドカインの場合と同様にロピバカインおよび代謝産物を走量した。ロピバカインの静脈内投与で平均血圧の低下は認められなった。ロピバカインの代謝産物の中では2´,6´-ピペコロキシリダイドが最も主要な代謝産物であり、ベンゼン環の氷酸化された3´-ヒドロキシロピバカインおよび4´-ヒドロキシロピバカインがわずかに生成することがわかった。 以上の結果から、ロピバカインはリドカイン同様にラット主体内で代謝を受けることが判明した。今後、吸入麻酔薬を投与して同様の実験を行う予定である。
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