1.神経一筋接合部レベルにおける検討 交感神経刺激に対する雄ネコ外尿道括約筋の反応を確約筋筋電図を用いて検討すると、正常ネコ及び核上型脊髄損傷ネコでは微小な誘発電位しか記録されないのに対し、核下型脊髄損傷ネコでは交感神経刺激により有意に大きな誘発電位が記録された。種々の薬物実験から、交感神経刺激によるこれらの誘発電位は交感神経節前線維から副交感神経節後線維へのシナプスを介して発現することが判明し、核下型脊髄損傷により体性神経(陰部神経9を除神経された外尿動括約筋は機能的に自律神経支配へと変化することが示唆された。 2.仙髄陰部神経核レベルにおける検討 一側の陰部神経近位端を電気刺激し、対側の陰部神経において活動電位を記録するという手法で、陰部神経求心性線維の電気刺激に対する陰部神経核の応答とそれに対する交感神経alpha1受容体遮断薬及びalpha2受容体刺激薬の効果を検討すると、正常ネコではalpha1遮断薬(塩酸プラゾシン0.1mg/kg静脈内投与)及びalpha2刺激薬(クロニジン0.05-0.1mg/kg静脈内投与)により陰部神経核の応答はほぼ完全に抑制されたのに対し、核上型脊髄損傷ネコではそれぞれ平均で50%、44%の抑制であった。この結果から、陰部神経求心路からの刺激伝達に対する陰部神経核の応答には交感神経受容体が深く関与していること、核上型の脊髄損傷により頭蓋内の上位中枢から陰部神経核に向かう下行性の神経投射路が切断されると、陰部神経核活動における交感神経受容体の関与が更に大きくなることが示唆された。
|