研究概要 |
H rasNIH/3T3細胞株(Ej-NIH/3T3,Ha8-21),K-ras癌遺伝子NIH/3T3細胞株(DT,1,8DNP2-2-5)を用いシスプラチン耐性現象におけるras癌遺伝子の役割を検討した。[結果]H-ras癌遺伝子発現細胞株(Ej-NIH/3T3,Ha8-21)は、その親株NIH/3T3に比べ約2-4倍シスプラチンに耐性であったが、K-ras遺伝子発現細胞株(DT,1,8DNP2-2-5)は、親株NIH/3T3との間でシスプラチン感受性に差を認めなかった。その機構を解明するため、シスプラチン耐性に関係していると考えられている因子である細胞内メタロチオネイン(MT)濃度、GST活性、シスプラチン投与1時間後の細胞内プラチナ濃度を検討した。その結果、細胞内薬剤代謝機構である細胞内MT濃度やGST活性ではその差を説明し得なかった。一方シスプラチン投与1時間後細胞内プラチナ濃度はH-ras癌遺伝子発現細胞株で親株NIH/3T3に比べ有意な低下を認めたが、K-ras癌遺伝子発現細胞株ではその低下を認めなかった。[まとめ]以上の結果よりras癌遺伝子によりもたらされるシスプラチン耐性機構はH-ras癌遺伝子発現細胞株に特異的であり、その機序としてこの遺伝子により癌化した細胞株で細胞内へのシスプラチンの取込みが減少していることが考えられた。
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