研究概要 |
原発性上皮小体機能亢進症21例から得られた42腺,続発性上皮小体機能亢進症28例から得られた110腺、甲状腺手術時に摘出した正常上皮小体40腺を対象とし、Proliferating cell nuclear antigen(PCNA)の発現を免疫組織化学的に観察し、上皮小体細胞の増殖動態を検討した。免疫組織染色は、抗PCNA抗体を1次抗体として、標識ストレプトアビジンビオチン法により行い、染色結果の検討は、上皮小体細胞1000個中のPCNA陽性細胞の比率を、PCNA-Labeling Index(LI)として算定した。結果1.上皮小体機能亢進症では正常上皮小体に比し、PCNA-LIは有意に高値を示し、高度の細胞増殖能を有すると考えられた。2.原発性上皮小体機能亢進症でのPCNA-LIは、腺腫>原発性過形成>腺腫のnormal rim>腺腫以外の正常上皮小体の順であった。normal rimと腺腫以外の正常上皮小体は、腺腫や原発性過形成に比し有意にPCNA-LIが低値であり、さらに正常対照よりも低値であることから、これらは細胞増殖能が抑制された状態と考えられた。3.続発性上皮小体機能亢進症での組織構築別のPCNA-LIの比較では、結節性過形成がび慢性過形成より有意に高値であった。構成細胞別のPCNA-LIは、transitional oxyphil cellで最も高値を示し、dark chief cellでは他の細胞に比し有意に低値であった。oxyphil cellは従来増殖能が低いものと考えられていたが、今回の検討によりclear chief cellと同程度またはそれ以上の細胞増殖能を有すると考えられた。4.移植腺再発例では初回手術時よりPCNA-LIは高値を示し、増殖能が亢進した状態と考えられた。5.PCNA-LIは組織重量よりPTHと良く相関していた。FITC-PCNA/PIによる2-color flow cytometryは、条件設定の困難さから基礎実験の段階ではあるが、PCNA陽性細胞数が正確に算定される点で優れており、現在検討中である。これらの結果は第58回日本泌尿器科学会東部総会、第4回日本尿路結石症研究会、第320回日本泌尿器科学会北海道地方会で発表した。
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