脱リン酸化酵素の代表的なものであるカルシニューリンについてラットの精巣で、その分子構造、生理学的役割について研究した。蛋白レベルにおいてラットの精巣には、抗ヒトカルシニューリン抗体に反応するbetaサブユニットがimmunoblottingによって2つ存在することが証明された。ラットの週齢ごとのdevelopmental studyではこの2つのサブユニットは、精子形成に何らかの協調性をもって関与していることが推測される。 このbetaサブユニットの塩基配列の決定においては、市販のラット精巣のm-RNAライブラリーから我々の作成した抗ヒトカルシニューリンbetaサブユニットモノクローナル抗体を用いてクローニングを試みた。いくつかのクローンをピックアップし、塩基配列をそれぞれ解析し、つなぎあわせてみると現在報告されているヒトのbetaサブユニットのものと明らかに異なるものが1つ検出できた。しかしこれは末端がとぎれた不完全なもので、今後再クローニングが必要である。 ヒトの精子に対してカルシニューリンを負荷してみて、運動能の変化をcell soft systemにて解析もしてみたが、やや運動能の増加はみられたが明らかではなかった。精子の造精機能において重要な役割を担っているのであるとすれば、精巣発現の不妊症患者に対して効果が期待できるものではないかと考えている。今後完全な塩基配列と精子形成過程における役割を検索することが必要であろう。
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