器官培養法は、ブタの皮膚由来のcollagen gel matrixを支持体とし、腫瘍の分化能が保持されるとともに腫瘍の三次元的な増殖あるいは組織構築が保たれる点が特徴である。本研究は腎細胞癌に対する有効な薬剤を決定する目的で、手術時採取した25症例の腎細胞癌組織を用い感受性試験を試み、その基礎的検討を行った。 実験方法は、collagen gel matrixをplate内に静置し、培養液を添加し、ゲル状にして待機。腎腫瘍組織は摘出後直ちに器官培養に供した。培養開始4日後に、各制癌剤(13種類)を添加した。なお、対照に薬剤無添加群を設定した。薬剤の効果は、対照群に対する組織のH^3-thymidine摂取率で示し、50%以下の摂取率を示した薬剤を有感受性と判定した。 成績、本実験での組織培養の成功率は、88%(25例中22例)であった。腎細胞癌に対する感受性試験で最も高い感受性の割合を示した薬剤は、Adriamycinで22例中12例(56%)、続いてVinblastineおよびBleomycinで22例中11例(50%)であった。逆に感受性の割合が低かった薬剤は、Methotrexate、およびBRM系薬剤であった。また腎細胞癌の組織型からみた薬剤感受性成績は、組織学的細胞異型度、構築型、細胞型と一定の関係は認められなかった。以上より器官培養法による、腎細胞癌の薬剤感受性結果は、比較的多くの症例に感受性を示す抗腫瘍制薬剤はAdriamycin、Vinblastine、およびBleomycinであり、今後これらの薬剤を用いての組み合わせによる化学療法が期待される。
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