研究概要 |
これまでに本研究代表者らは共焦点走査型レーザー顕微鏡(LSM)を用いて,塗抹標本上の細胞の各および細胞質の立体構築を再現してその三次元情報を検討する方法を確立し,偏平上皮(癌)細胞について検討した.その結果,(1)従来比較的厚い細胞と考えられていた正常傍基底型細胞は核,細胞質ともに他表層型および中層型の細胞より薄いこと,(2)核の異型を伴った細胞は正常細胞に比べて核の暑さが著しく異なること,(3)上皮内癌の細胞の核は球に近いの形態をしていること,(4)偏平上皮癌細胞は立体的に見て厚く,しかも凹凸のある形状をしていること,(5)炎症細胞,萎縮細胞においては核は厚みを増さないことなどを確認し,たとえ裸核細胞であっても炎症細胞や萎縮細胞と,癌細胞との鑑別が可能なことを明らかになった. また近年開発された分子生物学的な染色体検索法として,Fluoresence in situ hybridization(FISH)法を細胞周期間期の細胞に適用しすべての塗抹標本上の細胞の染色体数を検討する技術を確立し,癌細胞と非癌細胞ではその染色体数異常の発現率で差の認められることを確認した.そしてFISH法で検出される染色体のセントロメア由来のシグナルを上記と同様に核内の立体的な存在部位を明らかにし,良性,悪性細胞において違いが見られるかについて検討している.さらにこの技術は,胎児の出生前診断に応用することが可能であった.すなわち超音波断層法にて染色体異常を伴った先天性異常が疑われた症例に対し,羊水穿刺を行い,FISH法で短時間(16時間)で18-trisomyと診断することが可能であった。
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