研究概要 |
ヒト卵巣癌は、血行性、リンパ行性転移の他に腹膣内への播種性転移をおこし癌性腹水を産生することが多い。卵巣癌患者の腹水中にはurokinase type plasminogen activator(muPA)活性が強く認められ、このuPAが卵巣癌の転移・浸潤機構に強く関与している可能性がある。我々はヌードマウス異種移植にて浸潤転移能を有するヒト卵巣癌培養細胞株(HAC-2)の無血清培養上清中に、活性を有するmuPAが分泌されていることを確認している。本細胞を用いてin vitro、in vivo浸潤・転移モデルを作製し種々の細胞外基質分解抑制酵素による浸潤・転移抑制作用について検討し、その臨床応用の可能性を追求した。:1.(1)in vitro浸潤・転移モデルの作製:Albiniらの方法(A.Albini et al.:Cancer Res.、47:3239-3245、1987)に基ずきchemoinvasion assayを行なった。HAC-2細胞は本assay系において、in vitro浸潤能を有することが判明した。(2)in vivo浸潤・転移モデルの作製:HAC-2細 胞をBALB/Cヌードマウス皮下に接種したところ、約3週間にて筋肉、腹膣内への浸潤が肉眼的に著明に出現し、高率に肺転移巣を形成した。以上のassay系において種々のプロテアーゼインヒビターを用いた浸潤・転移抑制実験を行なうこととした。また、有効な薬剤を選択するために、以下に述べる基礎実験を行った。2.^<125>I-labelled fibrin-c oated tubeを用いた、fibrin分解活性の測定: 我々は,本assay系においてHAC-2細胞無血清培養上清中に、強いplasminogen依存性のfibrin分解活性を認めた。この活性はsoybean trypsin inhibitor、leupeptin、antipain、PAI-2により強い抑制をうけた。今後、これらの薬剤の、上記in vitro及びin vivoモデルにおける浸潤・転移抑制作用について検討を加え、さらに転移浸潤予防薬としての臨床応用の可能性を追求したい。
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