1.遺伝子変異の検出 各種細胞株(KLE、RL-95-2、HHUA、SKOV-3、MCAS)より、DNAを抽出してK-ras遺伝子に対してPCR-SSCP解析と直接シークエンス法により塩基配列を解析し、遺伝子変異を同定した。K-ras遺伝子の変異についての検討では現在までにHHUA、HEC、MCASの各細胞株ににおいて変異が確認されている。HHUAにおいてはcodon 12においてGGTよりGTTへの変異(Gly→Val)が認められ、HEC、MCASにおいてはGGTよりGATへの変異(Gly→Asp)が認められた。 2.アンチセンス遺伝子(AS-ODNs)による癌細胞増殖抑制作用の評価 (1)[^3H]-thymidine取込み HECにおいては特異的なAS-ODN_sの添加(1〜5muM)により[^3H]-thymidine取込みが著明に抑制された。しかし、その他の変異をもつ細胞株においてはその効果は有意ではなかった。 (2)Western blottingによる癌遺伝子蛋白の検出。 遺伝子蛋白についてもHECにおいてAS-ODNsによる特異的な発現抑制効果が認められた。その他の細胞株では有意ではなかった。 同じ遺伝子変異を持つ細胞株においても特異的なAS-ODNsの効果は細胞株によって反応が異なる、このことは細胞の癌化および増殖における遺伝子変異の果たす役割が細胞株によってそれぞれ異なることを示唆、あるいはAS-ODNsの作用機序が細胞株によって異なることを示唆する。今後はAS-ODNsの細胞への取り込み及び細胞内での動態の解析が必要である。また、将来の臨床応用に備え手術摘出標本に対するin vitroでの効果についても検討して行きたい。
|