研究概要 |
hCGbeta遺伝子群は6つの遺伝子により構成される。本研究ではhCGbeta遺伝子群について、1)トロホブラストの分化および腫瘍化に伴う各々の遺伝子活性の変化、2)beta1,2のalternative splicingによる転写産物の生物学的意義を解明しようとした。妊娠初期、末期胎盤絨毛、絨毛癌培養株よりmRNAを抽出し、hCGbeta遺伝子に特異的なprimerを用いたRT-PCR法でhCGbeta cDNAを選択的に増幅した。次いでその塩基配列をdideoxysequencing法で分析、各遺伝子の発現を検討し、絨毛細胞の分化あるいは腫瘍化に伴う各遺伝子の発現の変化を探った。はじめに妊娠初期絨毛と末期絨毛の比較を行なった。beta3,5,7,8に共通のプライマーを用いてhCGbeta cDNAをPCRで増幅したところ、初期絨毛に比べて末期絨毛では、hCGbeta mRNAの発現量は低下していた。beta1,2も同様に特異的プライマーで増幅したところ、末期絨毛では初期と比較して発現が低下していた。beta1,2にはalternative splicingが起こるが、RT-PCR法による増幅後のゲル電気泳動パターンの比較では、妊娠初期と末期の間でalternative splicingの割合に明らかな差はなかった。絨毛癌培養株についても正常絨毛と同様にbeta3,5,7,8の発現が認められた。beta1,2には絨毛癌培養株特有のsplicingのパターンの変化は認められなかった。beta1,2のalternative splicingによる産物の中で最もオープンリーディングフレームの大きい物は132アミノ酸残基の蛋白質に翻訳される可能性があった。そこで予測されるアミノ酸配列について既知の蛋白との相同性をGen Bankデータベースにより検索したところ既存の配列との相同性を認められなかった。
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