(1)妊娠中毒症例の脳循環 Transcranial Doppler velocimetry(TCD)を用いた妊娠中毒症例の脳循環動態の研究は1991年にJ.Cardiovascular Technologyに一部報告したが、本年症例を追加し、更なる検討を行った。対象を以下の3群に分けた。Pregnancy-induced hypertension(PIH);22例、chronic hypertension wity superimposed PIH(superimposed PIH);12例、chronic hypertension;25例である。[結果]中大脳動脈平均血流速度はPIHの82%、superimposed PIHの35%が正常妊娠例の平均±2SD以上の異常高値を示した。しかし、chronic hypertension例は3%が異常値をとるのみであった。また、内頚動脈は各群でほぼ正常な値をとった。以上より、YCDによって内頚動脈および中大脳動脈血流を測定することによって、妊娠中毒症の種類による脳循環動態の差を明らかにし、ひいては子癇発作が予測できる可能性を見出した。 (2)ラット頚動脈のノルエピネフリンとセロトニンに対する反応性への妊娠の影響 脳動脈の血管作動性物質への反応性に対する妊娠の影響を検討する目的で、ラット頚動脈を用いて実験した。この結果、妊娠ラットの頚動脈はノルエピネフリ ンに対する反応性が低下しているが、これはプロスタグランジンやendothelium-derived relaxing factorの関与は否定的であり、内皮非依存性であることが判明した。この結果は、平成6年3月号の日本産科婦人科学会雑誌に掲載予定である。
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