研究概要 |
上皮性卵巣腫瘍の悪性化を特異的に認識する単クロン抗体(12C3)の反応性の検討と認識抗原解析を行った。 ヒト未分化胚細胞株JOHYC-2を抗原とし常法でハイブリドーマを得た。スクリーニングはJOHYC-2ELISA、各正常臓器、腫瘍との反応性はホルマリン固定組織切片でのABC法によった。認識抗原の解析はゲル濾過、SDSPAGE,immunohlotting,酵素処理でみた。 12C3は上皮性卵巣癌と強く反応し、31例中21例(67.7%)、組織価型別では〓液性腺癌6/2、粘液性腺癌5/7、明細胞腺癌7/9、類内膜腺3/3、の細胞膜に染色性を認めたが、上皮性良性卵巣腫瘍30例(〓液性9、粘液性21)には反応しない。また境界悪性腫瘍では9例中4例(44.4%)に悪性化を疑う領域のみに反応性を示した。同一切片上でみたCA125の反応性は9例中7例(77.8%)の悪性化部分に陽性を示すものの、良性部位にも66.7%と偽陽性反応を認めた。他臓器悪性腫瘍(12臓器、48症例)での反応性は低率(4.2%)であり、また黄体細胞、皮脂腺の基底細胞、顎下腺の巣管以外の正常組織に反応しなかった。分子量は約200KD,エピトープは糖蛋白質上に存在するが、CA125,CA72-4,CA19-9とは異なっていた。 単クロン抗体(12C3)の認識抗原発現は腫瘍細胞の悪性化と密接な関係があることが示唆され、今後病理診断における良悪性鑑別に応用できる可能性がある。現在、卵巣癌の腫瘍内容液、腹水の細胞診への応用を試みている。
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