内耳の有毛細胞における神経伝達物質の役割について、モルモット蝸牛の有毛細胞を単離し、微小電極を用いてパッチクランプ法により研究を行った。一般的に細胞を単離する際には、酵素を用いて処理するため、酵素が細胞に及ぼす影響が皆無とは断言できない。しかし、蝸牛外有毛細胞においては、標本採取時の工夫によって、酵素処理を行わなくても十分単離が可能であることが確認された。 外有毛細胞においてGABA受容体が存在することが既に確認されているが、今回の研究においては、単離した有毛細胞に微小電極を刺入し、パッチクランプ法によりホールセルモードとした。まず、GABAを作用させて細胞膜を介したイオンの移動を電流として測定し、受容体の存在を確認した。次にGABAと同時にニューキノロン系抗生物質を作用させ、イオン電流を測定した。その結果、ニューキノロン系抗生物質は有毛細胞のGABA受容体には影響を及ぼさないことが明らかになった。 今後は他の神経伝達物質の受容体動態の追求と、様々な薬剤が及ぼす影響について更に研究を重ねる予定である。さらに、現在はまだ確立されていないとされている内有毛細胞の単離と、内外有毛細胞の受容体の相違についても研究する予定である。 また、アレルギー性鼻炎において、発症のメカニズムとしてSubstance-Pを代表とする神経伝達物質による軸索反射の存在が言われており、鼻粘膜腺細胞を中心とした細胞におけるおける受容体の存在、あるいはこれらに及ぼす抗原や薬剤の影響などについても、同様の手技を用いて究明したいと考えている。
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