前年度より引続き、ラットを用いて聴性脳幹反応と中間潜時反応を記録した。 当初、中間潜時反応の電極は頭頂正中部においた。薬剤負荷として塩酸リドカインを用い、経時的に誘発電位の変化を観察した。6mg/kg body weightの塩酸リドカイン静脈内投与によって、聴性脳幹反応、中間潜時反応の両者の潜時が一過性に延長することが明らかとなった。 聴性脳幹反応においては、速波ではP4波に顕著な潜時延長が認められた。高速フーリエ変換を用いて抽出した頭頂部および、中脳下丘上における陽性緩徐波においても統計学的に有意な潜時延長が認められた。中間潜時反応においても頂性脳幹反応に引き続く陰性電位であるNA波の有意な潜時延長が確認された。中間潜時反応における塩酸リドカイン静脈内投与による潜時の延長は新知見である。 誘発電位の経時的変化の態様から、塩酸リドカイン静脈内投与による潜時延長は、心循環系に対する塩酸リドカインの作用による間接的なものではなく、聴覚伝導路に対する直接的な影響であると考えられた。 上記の実験に引続き、大脳皮質上の様々な部位より中間潜時反応を記録し、ラットの聴皮質上にてきわめて振幅の大きな中間潜時反応を記録することに成功した。この誘発電位に対する薬物負荷実験については研究中である。
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