BrdUに対するモノクローナル抗体が作製されるようになってから、分裂期にある細胞をアイソトープを用いず、簡単な方法で検出できるようになった。まずウサギにBrdUを静脈注射し、時間をおいて口蓋扁桃を摘出する。固定、脱水、包埋の後、連続切片を作製し抗BrdU抗体にて免疫組織学的に染色した。静脈注射から摘出までの時間を変えることによりリンパ球の動態を観察できる。家兎のin vivoの実験により口蓋扁桃においては胚中心の主に底極部でリンパ球がさかんに分裂しているが、H^3-thymidineを用いたKoburgの報告とは異なり、分裂したリンパ球は暗殻には移動せず、注射の24時間後には扁桃からBrdUに変色された細胞はほとんど認められなくなっていた。また抗IgG抗体、抗IgM抗体で2重染色したところ抗BrdU抗体で染色されたリンパ球は抗IgG抗体、抗IgM抗体では染色されず、分裂期にあるリンパ球は形質細胞に成熟するまえに扁桃から出て行ってしまうと考えられた。 重層扁平上皮においてはBrdUでラベルされた細胞が基底部から時間の経過とともに表面に移動して行く所見が得られた。 つぎに手術により摘出したヒトの口蓋扁桃を薄切しBrdU含人工血液中でO_2とCO_2の混合ガスのもとに15分間培養することにより人の組織の検討もおこなった。この培養実験から、人の扁桃胚中心においても家兎と同様、BrdUでラベルされた細胞は胚中心底極部と上皮の基底部に認められた。習慣性扁桃炎と同様の所見が病巣感染においても認められ、明らかな相違はみられなかった。
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