研究概要 |
平成5年度科学研究費補助金により今回購入した設備備品は自動固定包埋装置である。研究対象動物であるモルモットの嗅上皮を採取し、ホルマリン固定、パラフィン包理する工程を自動的に行う装置である。今回の研究を遂行する上で大いに役だった。 成熟動物における中枢神経系では通常、神経の再生は生じないとされている。しかし、第I脳神経に属する嗅細胞は、幹細胞(再生母細胞)を有し、通常状態では新陳代謝を行い、また変性した際には再生が生ずる特異な神経細胞である。幹細胞については以前より嗅上皮の基底膜上に配列する基底細胞であるとする説が通説となっていた。しかし、われわれの研究より再生母細胞はこの基底細胞の一層上に位置する細胞であると考えられるようになった。そこでわれわれは、嗅上皮基底部に存在する分裂細胞の動態をDNA合成期に取り込まれるBromodeoxyuridine(BrdU)を用いて検索し、分裂細胞の動向を追うことでわれわれの説をさらに進めることとした。BrdU注入後間もない嗅上皮にあっては免疫組織化学的に基底細胞と異なる細胞がBrdUを取り込むことが同一切片において確認された。さらに分裂細胞のうち主にS期細胞の指標となるBrdU取り込み細胞と異なり分裂細胞のうちG1,S,G2,M期の細胞を幅広く認識するマーカー(proliferating cell nuclear antigen)を用いてもこれが基底細胞と異なることが分かった。BrdUを取り込んだ細胞はその後分裂し、嗅上皮の表層に向かって移動することが推定された。
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