(目的)メニエール病の病態は内リンパ水腫であり、近年内リンパ液の吸収障害説が有力視されている。これまで内リンパ水腫モデル動物の作製では、吸収部位である内リンパ嚢を様々な方法で直接破壊しており、内耳の血行障害(例えば塞栓症)が内リンパ水腫に及ぼす影響は全く検討されていなかった。今回の研究では、内リンパ嚢の静脈系である前庭導水管静脈の血流を選択的に遮断、間接的な内リンパ嚢の吸収障害による内リンパ水腫形成の試みを行った。 (方法)実験は体重300-400gでプライエル反射正常の健康成熟モルモットを用いた。ネンブタール麻酔下の動物の後頭蓋部分切除したのち、小脳表面に存在する硬膜を切除、小脳の一部を圧排することで、頭蓋骨内側から内リンパ嚢の存在部位を確認した。ドリルにより内リンパ嚢とS状静脈洞の間に形成した小溝をデンタルセメントにて埋めることで、その部位を走行する前庭導水管静脈の血流を遮断した。生存期間7日間でネンブタール麻酔下に還流固定、側頭骨を摘出した。摘出した標本は、脱灰等処理後に連続切片を作製、光学顕微鏡で観察した。 (結果・考察)生存期間7日間では、内リンパ水腫は蝸牛、前庭のいずれにも認められなかった。内リンパ嚢を直接破壊した場合でも生存期間が長期のものほど高度に内リンパ水腫をみとめたという報告がある。したがって、今後術後長期生存例での比較検討が必要であると考えている。
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