研究概要 |
内耳におけるアデニル酸シクラーゼ活性は血管条に強いことがわかっているが,アデニル酸シクラーゼやこれによって生成されるcAMPは内リンパ液の生成や調節,蝸牛内電位(EP)の調節,さらに蝸牛の情報伝達に関与しているといわれている。そしてこれらの酵素は2つのホルモン(エピネフリンとバソプレシン)によってコントロールされており,これらのホルモンレセプターは細胞膜においてG蛋白と結合している。このG蛋白はアデニル酸シクラーゼ系を活性化して細胞内の生理応答が引き起こされる。耳毒性を持つ利尿剤のフロセマイド(FU),エタクリン酸(EF)はアデニル酸シクラーゼを阻害してcAMPの生成を減少させるとすでに報告されている。 モルモット蝸牛を取り出して脱灰し,クライオスタットで8mumの切片を作成した。これにウサギ抗Gタンパク質抗体を反応させた後,さらにヤギFITC抗ウサギIgGを反応させて蛍光顕微鏡下に蝸牛におけるGタンパク質の局在を調べたところ,Gタンパク質は血管条に最も高密度に局在していた。この結果よりFU,EAのアデニル酸シクラーゼ阻害作用は,G蛋白を介しての作用である可能性があると予想された。 これを証明するため,以下の研究を計画している.モルモット蝸牛から血管条を採取し集めた血管条組織をホモジネートしてタンパク質定量を行った後,2-4mg/mlのタンパク質濃度に調整する。ここにATPを加えた後,Gタンパク質のアナログ(GMP-PNP)でアデニル酸シクラーゼを刺激してATPの代謝を活性化させ,その上清をcAMP測定用とする。ここにcAMP抗体を反応させてcAMP量を求めるが,抗体を反応させる前にFU,EAを加えた場合にcAMPの生成量が減少するかどうかを調べる。もし,Gタンパク質を阻害するのであればアデニル酸シクラーゼ系は活性化されず,従ってcAMPの生成は減少するはずである。
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