めまい・平衡障害例に対する平衡訓練の有用性を検討した。 1.対象:一側迷路障害5例(めまいを伴う突発性難聴2例、前庭神経炎3例)、両側迷路障害2例(ストレプトマイシンによる前庭障害、両側迷路機能高度低下各1例)、中枢性平衡障害3例(小脳梗塞、脳幹梗塞、脊髄小脳変性症各1例)であった。 2.方法:訓練前に平衡障害による能力低下につき、自覚症状は調査表で、他覚所見は平衡機能検査を行い把握した。把握した能力低下に対して、症例毎に適した訓練項目を能力低下の把握に用いた平衡機能検査から選び、1日3回(1回30分程度)、毎日自宅で訓練するように指導した。2週毎に来科させ訓練効果を観察した。 3.結果:(1)一側迷路障害例では、5例とも自覚症状(ベッドから体を起こす、椅子から立ち上がる、階段を昇る・降りる、横の物を取る、立った姿勢で方向を変える、屋外を歩くなど)、他覚所見(頭部運動、直立、歩行、円周歩行など)とも改善した。めまいを伴う突発性難聴の1例は、自然経過をみるため発症後2ケ月は薬物治療のみで経過をみていたが、自覚・他覚所見とも平衡障害の改善が見られず、訓練を開始したところ自覚・他覚所見とも改善傾向を示した。(2)両側迷路障害例では、2例とも訓練で改善を示した。ストレプトマイシンによる前庭障害例では発症6年後で症状固定していたが訓練により自覚・他覚所見とも平衡障害(頭部運度、躯幹運動、直立、歩行、自動回転、円周歩行など)が改善した。(3)中枢性平衡障害例では、3例とも改善を示した。開閉眼とも訓練後同じ時期より頭部運動、躯幹運動、直立、足踏み、歩行、昇降などが改善傾向を示した。迷路性平衡障害に比べ視性の代償は少ない成績であった。中枢性平衡障害例は、薬物の併用が必要であった。 以上、平衡障害例の能力低下の改善に平衡訓練は有用であった。
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