御子柴らにより発見されたイノシトール三燐酸レセプター(IP3-R)蛋白はカルシウムとならぶ細胞内伝達系の重要なメッセンジャーのひとつであるイノシトール三燐酸(IP3)の受容体であり、これに対する単クローン抗体が作成されて以来細胞内小胞体膜上におけるIP3-Rの存在が証明されてきたが近年小胞体膜上以外の存在も明らかにされてきた。今回頭頸部扁平上皮癌培養細胞株及び新鮮頭頸部扁平上皮癌組織を用いて免疫組織化学的にIP3-Rの発現及び分布を検討した。新鮮手術材料として得られた頭頸部扁平上皮癌組織より凍結切片を作成し免疫化学染色を行った結果、10A6単クローン抗体がほぼすべての扁平上皮癌細胞核内抗原と反応を示した。とくに分化度との明らかな関連は認められなかった。また、頭頸部扁平上皮癌培養細胞株4株(上顎癌2株、下咽頭癌1株、喉頭癌1株)の単層培養標本を用いて同様に10A6単クローン抗体を用いた免疫化学染色を行った結果、核内に微細顆粒状に発現がみられ細胞株間で染色強度に差が認められた。この抗原を共焦点レーザースキャン顕微鏡下に観察したところ核小体を除く核内にびまん性に発現がみられた。現在この抗原の局在を電顕にて検討中である。
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