内耳感覚細胞の運動機構の解明とその意義を明らかにするため本年度は研究計画に従い以下の様な成果をあげることが出来た。 前年度までの研究により前庭感覚細胞も外液環境の変化(高カリウム、高浸透圧、ATP等)により感覚毛の変位を主体とした運動性を有する事が明かにされたが、今年度の研究により、この運動性は感覚細胞の感覚受容を調整するとともに、感覚細胞の順応機構に強く関与していることが明かとなった。さらに免疫学的研究から細胞内のアクチン、ミオシンなどの局在を解明し、特にアクチンは感覚毛のみならず細胞の中にも存在することが見いだされた。その結果アクチンを主体とした細胞骨格が感覚細胞の運動性を生み出していることが証明された。 次ぎに、内耳の細胞骨格構造の三次元的構築を明らかにするためにサポニンを利用した新しい試料作製法を考案し走査電顕にて観察をおこなった。その結果、細胞内のアクチン、中間径フイラメント、微小管の三次元構築を明らかにすることが可能となった。これら細胞骨格の機能として細胞の形態の保持に関与すると共に感覚受容機構あるいは細胞内での顆粒や神経伝達物質の移動に関係していることが判明した。 これらの成果は第3回日本耳科学会(1993年11月、名古屋)ならびにInternational Symposium on Vestibular Disorders(1994年1月、広島)で発表したとともに7編の論文にまとめられた。
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