1(方法) 1)本研究ではケタラール全身麻酔下の成犬6頭を用いた。2)測定系は以下の通りである。嚥下活動の指標および喉頭閉鎖筋活動の指標として甲状舌骨筋・輪状咽頭筋および被裂筋の筋電図を用い、水嚥下時の咽頭通過音をマイクで収録し、嚥下および誤嚥の指標とした。誤嚥の有無と嚥下時喉頭閉鎖については、気管前壁開窓部から声門下に挿入した内視鏡を通してビデオカメラ像で確認した。これら諸現象をビデオ画像上で合成し、記録・解析に共した。3)上記測定系を利用し、正常例4例、反回神経麻痺による誤嚥モデル1例、喉頭挙上不全による誤嚥モデル1例、の3系統について嚥下動態、特に喉頭閉鎖と誤嚥の経時的関係を解析した。 2(予備実験結果) 4)嚥下時喉頭閉鎖と声門下から観察する方法は独創的で良い方法であるが、誤嚥があると視野が妨げられ声門閉鎖の時期が確定できないことが欠点である。本実験系ではこの点を補うため、マイクにより咽頭周辺の水通過音や声門閉鎖時の音を収録し、これら声門下画像と音響情報の両者を総合することにした。その結果、誤嚥があっても、多くの嚥下で声門閉鎖時期を推定できるようになった。 3(結果と今後の展望) 5)反回神経モデル動物では、正常例と明らかな差異を認めなかった。6)喉頭挙上不全モデル動物では、そのモデル作製手技上上喉頭神経内枝支配領域の粘膜下を傷害するため、喉頭挙上のみならず嚥下反射も障害される問題が残った。このため、十分な嚥下数が得られず定量的な解析に至らなかった。7)今後は上記喉頭挙上不全モデルの改良に加えて、以前作製法を修得した嚥下反射異常モデル特に上喉頭神経不全麻痺モデルの嚥下解析に今回の方法を適用してゆき、臨床的目的である誤嚥防止策の有効性の検討に進みたい。
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