研究概要 |
癌光化学療法に使用する光感受性物質として、クロロフィル誘導体のフェオフォーバイトa(PHA)を用いて、その有用性を研究した。PHAは脂溶性なため溶媒にリピオドールを用いてPHA溶液を作った。 PHA溶液の吸収スペクトルは、380nmと680nmにピークをもつ2峰性で、24時間連続測定でも変化せず安定性が示された。PHAの細胞毒性では、HEp-2細胞を用いた試験で、2時間培養後1mug/ml以上の濃度で著明に細胞増殖の抑制を示した。PHAの励起光としてQスイッチを装着したNd:YAGレーザー(平均1W,ピーク100KW,10ns)を用いた。0.5mug/mlのHPAのHEp-2細胞に対する光化学療法で有意な殺細胞効果が認められ、更に温熱療法を併用することで相加的な効果がみられた。正常モルモットを用いたPHAの10mg/kg量の注入48時間後の各組織の濃度分布を測定した。各組織抽出液の蛍光スペクトル強度による測定法では、皮膚、肺、肝、腎の順にPHAの取り込みが多く認められた。頭頸部領域の偏平上皮癌、腺癌および頸部転移癌を採取しヌードマウスへの移植を試みたが、時間的な制限もあり、短期間ではなかなか生着せず継代培養系の確率を得ることができなかった。従って、ヌードマウスへ移植した腫瘍に対する光化学療法に関する実験は完遂できず、今後の継続すべき研究課題となった。
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