上顎低分化型扁平上皮癌患者の原発巣およびリンパ節転移巣からそれぞれ癌細胞株樹立を行った。両細胞株の細胞生物学的特性を比較検討し、リンパ節転移細胞の性状に関して以下の結果を得た。 1)細胞の形態、造腫瘍性、染色体について、原発巣と転移巣とで明らかな差異は認められなかった。 2)細胞増殖に関して、細胞倍加時間は転移巣由来細胞株の方が長かったが、細胞飽和密度は高く、pile upの傾向が強かった。 3)免疫組織化学的検討で、transferrin receptor(TfR)、epidermal growth factor receptor(EGFR)、Ki-67等の増殖関連抗原の発現が転移巣由来細胞株で明らかに高かった。 4)制癌剤に対する感受性をMTT法(変法)で検討した結果、転移巣由来細胞株は原発巣由来細胞株に比べて、CDDPおよびCBDCAに対する感受性が低下していた。 5)LAK細胞に対する感受性について、転移巣由来細胞株で感受性の上昇が認められた。 以上のことから、培養細胞株での検討であるが、上顎癌リンパ節転移細胞は増殖能が高く、制癌剤に抵抗性を示す傾向があることが示唆された。転移の機序は、複雑かつ多段階的であるが、情報の蓄積が必要であると考えられた。 以上の結果は、第31回癌治療学会で発表し、論文を日本耳鼻咽喉科学会へ投稿した。(in press)。
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