聴性誘発反応はおもに内耳以降の聴覚路の興奮によって起こる反応で、与えられた音刺激が最終的に認知、記憶されるまでの過程を反映しているが、現在のところその起源については不明な部分が多かった。 今回の研究では、音刺激後90msec.付近(N1成分)と150msec.付近(P2成分)の反応で新たに起源が推定された。N1成分についてはその起源は2個と考えられその部位は両側の聴皮質であり、さらに双極子の向き(電流の向かう方向)は下方であると考えられた。P2成分については2種類の起源が考えられた。1種類はその起源が2個あり、その部位はN1成分と同様両側の聴皮質であり、双極子の向きは上方であると考えられた。もう1種類はその起源は1個あり、部位は帯状回であると考えられ、双極子の向きは上前方であると考えられた。 また、音刺激条件を変化させ、検討を行なった。刺激音の立ち上がり時間や刺激持続時間、刺激音の周波数を変化させても双極子の位置、方向に変化はみられなかった。N1、P2成分は極めて安定した反応であると同時に、発生源の部位も限局していることが示唆された。 臨床応用として、一側の伝音難聴を有する被験者にて検討を行なった。健側刺激での結果は前記と同様であり、また患側刺激では強大音の負荷にて同様の結果を示しており、このことから聴性誘発反応による聴力推定が可能であり、また双極子の位置や方向が変わらないことを確認することにより、推定した聴力に信頼性を持たせることが可能となる。 これらの内容は、平成5年度の日本耳鼻咽喉科学会、日本脳波筋電図学会で発表し、現在論文投稿中である。
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