1)ロシア共和国ヤロスラブリ医科大学で開発された副鼻腔炎治療用カテーテル(YAMIK)を約100症例のべ350回施行した。その結果手技上特に問題となるようなことはなく、合併症はYAMIK操作中に見られた鼻出血、薬液注入に際しての経耳管的な逆流による症状等であり、重篤なものはなかった。今回我々が行った臨床例の自覚症状の改善率は6-70%で、レントゲン所見の陰影改善率も部位による差があるものの、68-90%であった。これらの臨床データにより本カテーテルの有用性は認められたと考える。 2)カテーテルの材質は依然ラテックスゴム製であり改善の余地がある。株式会社高研により試作されたシリコン製のカテーテルを開発者の一人であるロシア共和国ヤロスラブリ医科大学のコズロフ助教授に使用してもらい意見を伺った。その結果カテーテルの材質としては優秀であるが、制作費用が高くつきすぎると言う点を指摘された。また若干カテーテルの屈曲性と硬度に難があるという意見も出された。今後の検討を加えていきたい。 3)鼻副鼻腔粘膜細胞の組織培養系を用いた基礎的研究に関しては何度か試みたが今回は理想的な培養系を確立するには至らなかった。培地や培養法の工夫が必要と考えられた。 今後の課題としては、本邦での臨床症例数を増やし本カテーテルの使用法を確立するとともに、より実用的な素材のカテーテルの開発によりその安定した供給をめざす事と考える。基礎的研究のための実験系の確立も急務と思われる。
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