真珠種性中耳炎の中耳腔内上皮進展及び骨吸収に感染あるいは上皮下肉芽組織の存在が重要と考えられている。しかしながら、その詳細は不明であり、実験モデルを作成し、そのモデルを用いての真珠種性中耳炎症機転の解明が有用と考えている。臨床的には感染の示標となる手術時の耳漏の有無、さらに採取標本の増殖能の変化を、増殖能の目安となる抗proliferative cell nuclear antigen(PCNA)抗体陽性細胞の密度より検討し報告している。すなわち、手術時に耳漏を認めた例では有意に抗PCNA陽性細胞の数は増加し、又上皮細胞浸潤を認める例でも抗PCNA陽性細胞の数は増加した。この事より明らかに真珠種性中耳炎の成立に感染あるいは上皮下の細胞浸潤が何らかの役割を果たしているものと考えられる。次に、実験モデルとしてモルモット、マウスの中耳腔内にカラゲニン、エンドトキシンを注入、中耳腔粘膜に炎症を引き起こした上で、耳介上皮を中耳腔内に移植したところ、中耳腔に上皮が増殖し嚢胞を形成する事が観察された。しかしながら、細胞増殖能の示標となる抗PCNA抗体陽性細胞の数はコントロールである正常耳介上皮と現在のところその密度に有意差はなく、さらに高度の中耳腔の炎症が必要であるものと推測し、検討を加えている。またSCIDマウスについても、同様の方法にて検討中であるが、現在までのところ中耳腔の嚢胞形成には至っておらず、中耳腔炎症を引き起こす方法等を検討中である。
|