研究概要 |
1.目的:虹彩新生血管は種々の網膜疾患に続発し、しばしば難治性の緑内障へと進展する重篤な合併症である。虹彩新生血管の発生は網膜組織の低酸素状態が引き金となることが考えられている。しかしながら虹彩新生血管の発症機転,特に眼内の酸素分圧との関係は未解明な点が多い。この点を解明することを目的として実験を計画した。 2.方法:PO2モニターに接続した酸素電極(関電極と不関電極)を空気にて飽和させた生理食塩液中に留置し大気中の酸素分圧に合わせた。ラットをキシラジン0.1cc・ケタラール0.2ccの混合液を筋注し麻酔した。さらにアトロピン0.1cc筋注した。固定台にラットを固定し耳朶に不関電極を装着した。角膜輪部より2mm後方10時から11時の強巻こうを穿刺し,水晶体にふれないよう注意しながら,関電極を挿入した。電極を網膜直上まですすめ,測定値が安定するまで保持し,酸素分圧を測定した。つぎに酸素電極を抜去し,同じ強膜創からジアテルミ-を挿入し,視神経乳頭にあて,網膜動静脈を凝固閉塞した。同様に関電極を挿入し,網膜直上の酸素分圧を測定した。 3.結果:網膜直上の酸素分圧は網膜動静脈閉塞前で平均24mmHg,閉塞後で平均14mmHgであった。 考按:ラットの眼内酸素分圧測定が可能であった。網膜動静脈閉塞後で明らかに硝子体中の酸素分圧の低下が認められた。しかしながら前房中の酸素分圧は酸素電極の挿入により消失し,酸素分圧の測定が困難であった。また前房の酸素分圧を測定するため水晶体摘出を試みたが,ラットのような小さい水晶体摘出は困難であり、水晶体析出後の酸素分圧測定に支障をきたした。今後,水晶体摘出の術式を改良し,前房中の酸素分圧の測定を行い,眼内酵素分圧の変化を追跡してみたい。
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