網膜杆体の機能は暗順応測定により、測定できるが指標の大きさが5度あるいは10度と決められた大きさであるため、測定部位により感覚閾値が異なる。一方、ガンツフェルト刺激装置を用いて行うことで、全網膜を一様に刺激し感度を測定するためより簡便な方法であるが、瞳孔面積などにより網膜照度が変わるなどの問題点もある。 今回の研究で、網膜の杆体の機能を視覚誘発電位を用いて他覚的に測定すること、緑内障初期においてその異常を視覚誘発電位を用いて検出できるか検討した。従来の視覚誘発電位は、主として錐体機能を反映したものであり、杆体機能を測定することは杆体からの電位がかなり小さく、難しいと考えられていたが、今回の結果から臨床的にも評価の対象となる電位が得られることがわかった。正常者とともに緑内障眼において測定を行った結果、視野障害の進行した緑内障では明らかに異常を示すことがわかった。一方、緑内障の早期においてこの検査法が有用かどうかは、より多くの症例を検討する必要がある。緑内障初期では、視野変化も一様ではなく、症例によっては静的視野計で異常を検出できないものもあり、視神経乳頭の陥凹の大きさなどを客観的に判定し、今後検討する必要があると考えられる。また本検査法は十分な暗順応が必要なこと、刺激強度一振幅の関係を求め比較検討した結果、測定時間が長くかかることから、嗜的刺激条件がわかればより短い検査時間で行えるため、今後これらの刺激条件を検討、応用してみる考えである。
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