以下の2点で成果がみられた。 1、フォークト-小柳-原田病(VKH)は日本人に多い内因性ぶどう膜炎であり、日常臨床で統一した治療にもかかわらず遷延化型と非遷延型の2群に分かれることを経験する。これまで本疾患が腫瘍組織適合抗原系のHLA-DR4と強い関連があることが報告されており、現在HLA-DR4のサブタイプの検索がなされている。しかしその臨床経過とHLAサブタイプの関連に言及した臨床研究はない。今回、我々はVKH患者のHLA-DR4サブタイプを検索し、遷延化型、非遷延化型の2群間に免疫遺伝学的相異があるか否かを検討した。対象は日本人のVKH患者54例、内訳は遷延型27例、非遷延型15例、経過観察の短いために分類できなかった12例である。患者全体の93%がHLA-DR4陽性であった。遷延型27例は全例ともDRB1^*0405またはDRB1^*0410のいずれかが陽性であり、一方、非遷延型ではDR4陰性者が2例で、13例のDR4陽性者のうちDRB1^*0405、DRB1^*0410とも陰性である者が4例存在した。VKHの臨床経過には免疫遺伝学的背景の関与があり、本結果はこの疾患の治療面にも役立つものと考えられた。 2、強直性脊椎炎(AS)には急性前部ぶどう膜炎(AAU)が高頻度に合併するが、AAUの有無でASのHLA-B27のgenotypeに差異があるかを検討した。この様な臨床研究は日本人のAS患者が極稀であること、正常人に占めるHLA-B27の頻度が少ないことより未だなされていない。確認されたgenotypeはB27-2704、2705の2種類で、その頻度にAAUの有無での統計的な有意差はなかった。ASのAAUの発症にはHLA-B27の免疫遺伝学的背景の関与はないものと考えられた。
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