最近、本邦でも増加しているAIDS患者は非定型抗酸菌の1種であるMycobacterium avium complex(以下MAC)感染症を高頻度に起こすが、従来の抗結核剤や化学療法剤に治療抵抗性があり、有効な化学療法剤の出現が待たれている。そこで我々は、化学療法剤の開発に欠かせないMAC全身播種性感染実験モデル系を免疫不全動物などを用いて確立しようと試みた。 NZW系ウサギ、T細胞及びB細胞の機能を欠如したSCIDマウス、好中球及びNK細胞の機能を欠如したBeigeマウスにMACを静脈内感染させ、一定期間後に屠殺・剖検して、臓器中あるいは血液中の生菌単位を寒天培地上で算定した。また、病理組織標本を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色及びチール・ネ-ルゼン染色を施して光学顕微鏡で観察した。あわせて、実際にこれらのモデル動物を用いて新化学療法剤を経口投与し、MAC感染症に対する治療効果を検討したところ、いずれの動物におけるMAC感染症に対しても、現在開発中の新リファマイシン誘導体、KRM1648は、同じリファマイシン誘導体であるリファピシンよりも優れた治療効果を示すことがわかった。
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