開放隅角緑内障における眼圧上昇の機序を明確にするために、房水の流出路のうちシュレム管と傍シュレム管結合組織に相当する単純化したモデルの作製を試みた。角膜移植術に使用した非緑内障摘出人眼から線維柱帯を切り出し、培養液中で器官培養を行い、操作後5日目に細胞の発芽を確認した。発芽した細胞を32日目に継代を行った。3代までの継代が可能であった。培養された細胞は、形態学的には細胞質突起に富む紡錘型の細胞で、これまでの報告にある線維柱帯の細胞の所見と一致した。確実性には欠けるがこの1年で細胞培養が可能となった。 しかし、この細胞の期限を決定するには形態学的な評価だけでは不十分である。今後は抗ビメンチン抗体、抗デスミン抗体などでの免疫染色をおこない、確かに線維柱帯由来の細胞であるかどうかの検討が必要である。また、特にシュレム氏管内皮細胞起源の可能性についても、抗VIII因子抗体による免疫染色を行い検討したい。培養細胞の起源が同定されれば、培養細胞をメッシュで境された2槽性の容器のメッシュ上に置き、一方の槽のステロイドの濃度を変えて水の伝導率を求める。次に、それぞれのメッシュの上の内皮細胞を電子顕微鏡で観察し、細胞外基質の厚さを測定し房水流出抵抗と細胞外基質の量の関係を調べる予定である。また、細胞外基質の組織学的構成及び様々な緑内障治療薬がおよぼす影響についても検討したい。
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