本年度のわれわれの目標は眼科領域でみられる糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの虚血性網膜症に続発する網膜新生血管あるいは虹彩新生血管、加齡性黄斑変性症に代表される網膜下新生血管などの新生血管をインターフェロンを用いて抑制するための基礎実験を行なうことであった。本年度はまず有色ラット眼の眼底後極部に長波長の色素レーザーで強度光凝固を行ない、脈絡膜新生血管を作成した。2-4週間程度で網膜下に色素上皮を破って新生血管板が発生した像が得られた。組織学的にも光凝固後のブルフ膜の断裂部位に管腔の大きな新生血管が重層した網膜色素上皮の間に多数みられることが解った。その眼において蛍光眼底造影を行なった後、将来のインターフェロン投与による効果判定に定量性を持たせるため蛍光撮影の結果は写真と同時にビデオカララに取り込み録画した。再生した映像はビデオフレームメモリーにとりこみ小型コンピューター上に転送、画像解析を行なった。この時点で問題となったのが、バックグラウンドの背景蛍光と新生血管からの過蛍光をうまく分離することであり、現在宮大工学部と共同研究中である。今度この問題がクリアできれば実際にインターフェロンを投与開始し、投与による影響を定量的に観察できる。 さらに臨床部門では肝炎患者でインターフェロンを投与されている患者79名につきプロスペクティブに眼底検査を行ない、軟性白斑や網膜出血が60%以上の高頻度でみつかることを見出し報告した。また糖尿病があるケースでは単純網膜症が悪化することが多いことも特筆すべき点と思われた。以上の結果は日本臨床眼科学会をはじめとする学会で報告した。
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