特発性および網膜剥離術後の黄斑部網膜前膜(以下、黄斑前膜)の進展形式、および前膜剥離手術後の視機能の変化を解明するのを目的に、過去に網膜剥離手術を受けた裂孔原性網膜剥離症例を対象に術後の黄斑前膜の発症頻度と進展形式を臨床分類法で調査し、また、硝子体手術を受けた黄斑前膜症例の術前術後の視力・網膜感度の変化を経時的に調査した。 まず、網膜剥離術後の黄斑前膜の発症頻度を連続する100眼について調査した結果では、術前に黄斑前膜がみられた症例が23%であったのに対し、術後1年では59%の症例に確認された。分類別では、重症黄斑前膜が9%にみられた。さらに、105眼を対象にして術後の黄斑前膜の頻度を程度別に術後1年まで経時的に追跡調査したところ、術後期間が経過するにつれて黄斑前膜の頻度は増加していき、術後6か月まで増加がみられ、術後9か月以降の発症はなかった。この増加曲線は指数回帰曲線を描くことが判明した。この研究では、最終的に半数の症例に黄斑前膜が発症した。 次に、発症した重症黄斑前膜に対する手術療法の効果を判定するため、術後の視力経過に加えて、網膜感度を術後経時的に測定した結果、特発性黄斑前膜と続発性黄斑前膜に対する手術効果に差があることが判明した。前者に比較し後者のほうが、術後の視力・網膜感度の改善が良好であることがわかった。
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