糖尿病性視神経障害を検索するため、以下の実験を行った。 1)実験モデル 昨年度に引き続きHartley系モルモットにstreptozotocin(STZ)を腹腔内に投与して作成した糖尿病動物にascorbic acid欠乏飼料を与える実験モデルを使用した。実験は対照を含め以下の4群につき、視神経障害を形態学的に検討した。 a)STZ投与のみ(STZ群と略) b)STZ投与後にascorbic acid欠乏飼料投与(STZ+Asa-D群と略) c)STZを投与せず、ascorbic acid欠乏飼料のみ投与(Asa-D群と略) d)STZを投与せず、普通飼料で飼育(コントロール群) 2)方法 各群の個体はエーテル麻酔下にて脱血層殺し、球後視神経を摘出し、免疫組織化学的および、電顕的に観察した。 3)結果、考察および今後の展開 抗ニューロフィラメント抗体では各群には著しい差は見られなかった。抗GFAP抗体ではSTZ+Asa-D群に強く染色された。電顕ではSTZ+Asa-D群に著しい変化がみられた。視神経軸索の拡大、髄鞘の裂開、薄層化が目立ち、障害が強い個体では視神経線維の脱落がみられた。STZ群およびAsa-D群ではSTZ+Asa-D群より視神経線維自体の障害は軽度であった。また、血管壁の変化は各群間では差が見られなかった。以上より糖尿病において、低亜鉛血症をおこすascorbic acid欠乏状態を負荷させると著明な視神経障害が出現することが確かめられた。この視神経障害の病態は血管障害というより、視神経自体の代謝障害によるものと考えられた。現在、視神経障害の定量的検索について検討を加えている。今後は臨床例について糖尿病における視神経障害との潜在的なビタミン欠乏について検討する予定である。
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