エンドセリンは血管収縮性生理活性ペプチドで眼循環の調節に関与していると推察されている。くも膜下出血や心臓手術後などに認められる網膜出血にもエンドセリン分泌異常の関与が考えられている。実際に10^<-5>Mのエンドセリン-1(ET-1)10mu1を家兎硝子体中に注入すると、14日間にわたって網膜血管は収縮し視神経乳頭蒼白は持続した。さらに視覚誘発電位(VEP)頂点潛時の延長も認められ、その効果は非常に協力で持続的であった。その機能発現にはカルシウムイオンチャンネルを介していると考えられていることから、ET-1による眼循環の変化と、それに対するカルシウムイオンチャンネルブロッカーである塩酸ニカルジピンの効果を検討した。白色家兎の左眼硝子体に前処置として、10^<-4>Mの塩酸ニカルジピンを10mu1注入し、20分後に10^<-6>MのET-1を10mu1注入した。右眼には人口眼内灌流液を10mu1注入した後ET-1を注入し対照眼とした。両眼の視機能変化の差を、網膜電図(ERG)およびVEPを用いて検討した。ET-1によりERGa波頂点潜時およびVEP頂点潜時の延長が認められたが、塩酸ニカルジピンの前処置により、これらの変化は完全に抑制された。そこでカルシウム拮抗剤の静脈内投与の効果を判定するため、ET-1硝子体内注入と同時に塩酸ニカルジピンを家兎の耳静脈より20mu/kg静注すると、やはりVEP頂点潜時延長が抑制された。したがってET-1の作用には、少なくともカルシウムイオンチャンネルが関係しており、臨床的には網膜視神経乳頭循環障害治療に対するカルシウム拮抗剤の効果が期待された。
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