研究概要 |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が線維芽細胞成長因子(FGF)などのヘパリン結合性成長因子を保持するreservoirして働くことに注目し、ラット下顎切歯におけるHSPGの局在についてそのグリコサミノグリカンに対するモノクロナール抗体を用いて免疫組織化学的に検索するとともに、切片上にてbFGFの結合部位の検討し共焦点走査型レーザー顕微鏡にて観察を行った。 HSPGの局在は、分化期には、外エナメル上皮の基底膜に認められ、形成期に近づくにつれ、外エナメル上皮、エナメル髄、中間層細胞の細胞膜にも認められるようになった。形成期になる免疫反応は、中間層細胞の細胞膜にもっとも強い反応が認められたが、エナメル芽細胞においてはHSPGの局在を示す免疫反応はほとんど認められなかった。成熟期にいたると、乳頭層細胞の細胞膜に強い免疫反応が認められ、ruffle-ended ameloblast,smooth-ended ameloblastいずれの成熟期エナメル芽細胞にも免疫反応は陰性であった。また、bFGFの結合部位もHSPGの局在と同様な傾向を示した。 以上の結果から、中間層細胞、乳頭層細胞の細胞膜にはヘパラン硫酸鎖が含まれていることが明かとなり、Vainio Thesleff(1989)らが報告している細胞膜型のヘパラン硫酸プロテオグリカンであるシンデカンの局在を反映しているものと考えられた。中間層細胞、乳頭層細胞の細胞膜のヘパラン硫酸鎖は、陰性荷電によりカルシウムなどの陽イオンをトラップすることにより、ミネラルの輸送調節を行っている可能性が考えられる。さらに、ヘパリン結合性成長因子であるbFGF結合することから、中間層細胞、乳頭層細胞は成長因子を局所に貯蔵することにより、エナメル芽細胞の分化、形態変化を制御している可能性も推測される。
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