カルレチニンを含む神経線維(以下、CR線維と略す)は、ラット臼歯歯髄・歯肉・口唇粘膜・鼻粘膜に豊富に観察されたが、顔面皮膚にはほとんど観察されなかった。根部歯髄において、CR線維は、平滑なものと念珠状のものとが観察された。これらの線維は、根部歯髄内を上行し、髄室へと進入し、天蓋付近や髄角部における象牙芽細胞下層付近で、枝分かれしていた。象牙芽細胞下層におけるCR線維は、ほとんど全ての念珠状となり、それらの一部は、象牙芽細胞層に侵入していた。しかし象牙前質・象牙質には、CR線維は、認められなかった。根部歯髄及び象牙芽細胞層における全ての念珠状のCR線維及び象牙芽細胞下層における一部の念珠状のCR線維は、タキキニンも含んでいた。しかし、タキキニンのみを含む線維も歯髄には、豊富に観察された。歯肉においても、CR線維は、平滑なものと念珠状のものとが、観察されたが、付着上皮・内縁上皮・外縁上皮付近においては、念珠状のCR線維しか認められなかった。特に、付着上皮においては、微細なCR線維が、上皮内で、密な神経線維網を形成していた。歯肉における念珠状のCR線維もタキキニンを含んでいた。口唇粘膜・鼻粘膜の粘膜上皮下の固有層においても、CR線維を含む神経線維束が、観察され、それらの一部は上皮内に侵入していた。これらのCR線維の由来を調べるため、歯髄や鼻粘膜にFast Blue或いはfluorogoldを注入し、三叉神経節において、それぞれのtracerの蛍光とCRの免疫反応について調べた。その結果、鼻粘膜を支配する三叉神経節細胞の18%に、また、歯髄を支配する三叉神経節細胞のうち、ごくわずかの細胞にCRの免疫反応が認められた。
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