原因不明の自己免疫疾患とされるシェ-グレン症候群は涙腺、唾液腺にCD4陽性のTリンパ球を主体とする細胞浸潤とそれにともなった腺組織破壊が認められる。この病態の形成には唾液腺局所における免疫担当細胞からのサイトカインの産生異常が密接に関連しているといわれている。最近、神経系と免疫系の相互作用が次第に明らかにされ、神経ペプチドによる免疫担当細胞のサイトカイン誘導能も明らかになってきている。今回の研究においてシェ-グレン症候群自己免疫性唾液腺炎の病態形成における神経ペプチドの関与の解明のため、ヒト唾液腺導管上皮細胞株であるHSGを用いて神経ペプチドによるサイトカインの誘導能の解析を試み、サブスタンスP、VIP、CGRPなど各種神経ペプチドが唾液腺導管上皮細胞のサイトカイン産生に関与している事実を明らかにすることができた。即ち、HSGをINF-gamma(100U/ml)にて7日間刺激してクラスII、IL-6、IL-12遺伝子を発現させた後、各種神経ペプチド(サブスタンスP、CGRP、VIP)を10^<-7>M/ml投与したところ、CGRP、VIP投与4日目の細胞ではIL-6、IL-12およびクラスII遺伝子の減少を認め、7日目では更に減少することをRT-PCR法にて確認した。またサブスタンスP投与4日目の細胞ではIL-6、IL-12、クラスIIの発現増強をRT-PCR法、免疫組織化学法にて確認した。本研究においてヒト培養唾液腺導管上皮細胞のサイトカイン誘導能における神経ペプチドの役割の重要性を明らかにすることができたことから、今後は生体内での自己免疫性唾液腺炎局所におけるサイトカインと神経ペプチドの関連性の解析が必要とされる。
|