ラット胎児頭蓋冠由来骨形成細胞を、BGJb並びにalphaMEMを用い培養した。これら細胞のアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性は、細胞が単層の時期では正常環境(対照)に比べ、低カルシウム濃度培養液(低Ca環境)で有意に高い値が認められた。細胞が多層化する時期では、この活性は両培養液の細胞共に対照では上昇したが、低Ca環境では変動せず、その結果として対照と低Ca環境下の細胞間で、有意な差が認められなくなった。その後、対照における活性はBGJbでは上昇せず、alphaMEMでは上昇を続けた。 石灰化部位は、BGJbの対照並びに両培養液の低Ca環境では認められず、dMEMの対照のみ認められた。dMEMの対照はALP活性の上昇並びに細胞の多層化と共に結節を形成し、石灰化の開始が認められた。引き続き、結節間の連結が生じることも認められた。走査型電子顕微鏡像では細胞膜には多数の長い突起が認められ、伸展した突起の一部は他の細胞と結合していた。また、透過型電子顕微鏡像ではコラーゲン線維と基質小胞が認められた。 オステオカルシンはalphaMEMの対照のみに検出された。 これらの結果は、beta-glycerophosphateやdexamethasone等を用いることなく得られた。 一方、BGJbを用いた場合、本研究の初代培養細胞のみならず骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)でもALP活性の著しい上昇とそれに伴う石灰化部位の出現は認められなかった。以上の結果から、培養液の違いによる石灰化現象の有無は、BGJbとalphaMEMの組成の差異のためと推測される。また、低Ca培養液において細胞のALP活性が亢進することは細胞の機能を考える上で興味深く、その一つとして環境の異常に対する細胞の反応が推測される。従って、今後はALPの精製を行い、それぞれのALPの違いについて検索する。
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