研究概要 |
ヒトのアルカリホスファターゼ(ALP)は、遺伝子的に少なくとも4つのタイプ、すなわち臓器非特異型(骨、肝、腎)、小腸型、胎盤型、胎盤様型に分類され、近年、それらの遺伝子構造の解明が進んでいる。ヒトの歯の、特に歯髄のALPについては、酵素化学的性質から、骨のALPと同様に臓器非特異型に分類され、免疫学的にも臓器非特異型に対するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体とも反応し、遺伝子レベルの研究でも、ヒト臓器非特異型のALP遺伝子とハイブリダイズすることを報告した。ヒトの臓器非特異型の遺伝子は、single geneとして存在するが(Weiss et al.,1988)、ヒトの肝ではその遺伝子から、骨とは別のmRNAが作られ、プロモーター領域の比較が注目されている。そこで、歯のALPでも、骨のALPと同じ遺伝子発現の調節機構が働いているのか、それとも別の歯組織特有の発現調節機構が存在するのかを明らかにするため、ヒトの骨または肝のALP遺伝子にそれぞれ特異的な第一エクソンの合成オリゴヌクレオチドプローブを作製し、ヒトの歯根膜細胞及び歯髄細胞のRNAについてノーザンブロット分析を行った結果、歯根膜細胞のRNAでは骨のALP遺伝子のプローブと明らかな反応が認められたが、歯髄細胞のRNAでは、明らかな反応が認められず、骨や肝とは別のRNAの存在が示唆された。そこで、さらに培養ヒト歯根膜細胞及び歯髄細胞より、RNAをAGPC法により調製し、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いて、ポリ(A)、^+RNA(mRNA)を精製した。今後、このmRNAから、ヒト歯根膜細胞及び歯髄細胞のcDNAライブラリーを得て、5'上流域の遺伝子クローンを比較、検索し、歯のALPのプロモーター領域について詳細な研究を進めていくことを計画している。
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