研究概要 |
プライオトロフィン(PTN)は,神経突起の伸長活性を有するヘパリン結合性タンパクとして見いだされ,発生ならびに細胞分化において何らかの重要な機能を果たしているらしい。このタンパクは骨基質中にも存在する。本研究は,骨芽細胞様細胞の培養系を用いプライオトロフィンの産生調節に関してnRNAレベルで検討した。すなわち,種々の骨芽細胞様細胞を培養し骨芽細胞の機能に影響を及ぼすカルシウム代謝ホルモン,増殖因子やサイトカインを添加した。それらの細胞からRNAを抽出し,ラットPTN cDNAをプローブとして用いたノーザン解析でプライオトロフィンのmRNA量を調べた。 ROS17/2.8,ROS25/1,UMR106ならびにMCT3T3-E1細胞において約1.8kbの単一バンドとして,培養時の血清濃度にかかわらずプライオトロフィンmRNAの発現が認められた。ROS17/2.8やMC3T3-E1細胞においては,活性型ビタミンDの添加濃度に依存して,プライオトロフィンmRNAの発現が減少した。一方,骨芽細胞の形質を有さないROS25/1細胞ではこの活性型ビタミンDの効果は認められなかった。またMC3T3-E1細胞のプライオトロフィンmRNAの発現は,副甲状腺ホルモンもしくはインターロイキン6によって増加することが認められた。これらの培養系を用いた検討の結果は,骨芽細胞のプライオトロフィンの産生が,活性型ビタミンD等の骨芽細胞の分化ならびに機能に影響を与える生理活性物質により調節されていることを示唆したものである。 本研究により,骨組織におけるプライオトロフィンの産生制御の一端を明らかにすることができ,今後骨芽細胞の分化や骨形成の機構を解明していく上で重要であると考えられた。
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