麻酔ウサギおよび覚醒したヒトを用いて実験を行った。 1.麻酔ウサギでの実験 ハロタンで麻酔したウサギの上顎切歯に強さ約1 kgfの圧刺激を持続的に(15秒間)あるいは反復して(80回/分のリズム)手動で加えた。その時の呼吸活動の変化を解析するために、横隔膜(吸息筋)および中咽頭収縮筋(呼息系の筋)より筋電図を記録した。その結果、吸息系の増強と呼息系の抑制が生じた。歯根膜からの非侵害性の圧感覚情報により、呼息相の短縮を伴う呼吸数の増加と横隔膜活動の増強を特徴とする呼吸増強反射が出現することが明らかになった。本研究で認められた歯根膜受容器の関与する呼吸増強反射は、咀嚼時など咬合が生じる際の呼吸調節に寄与することが示唆された。 ヒトでの実験 今回購入した高圧蒸気減菌器で消毒した器具を用いて実験を進めた。鼻孔に装着した温度センサーピックアップを用いて呼吸気流を記録した。歯に痛みとならないような弱い圧刺激を持続的に加えると、1回換気量が減少した。またクレンチングやガム咀嚼により、呼吸数が増加する場合と減少する場合とがあった。ヒトの場合随意的な要素の変動が反射効果にも影響を及ぼしうるので、さらに詳細な検討が必要である。いずれにせよ、歯根膜圧感覚情報により呼吸活動が変化しうることが確かめられた。
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