カテプシンEの細胞内輸送機構を明らかにするため、ラット腹腔マクロファージを用いたパルスチェイス実験を行い以下の成果を得た。 1.非還元条件下のフルオログラフィーでカテプシンEは、46kDaのプロ型酵素として生合成された後、チェイス2時間までの間に低分子量にバンドがシフトした。また、、2量体より単量体の量が多いことが示唆された。この結果は単量体のプロ型酵素から成熟型酵素へのプロセシングが生じていると考えられ、マウスフレンド細胞、ラット胸腺細胞において2量体のプロ型のままで存在していたことと異なっていた。 2.カテプシンEの糖鎖についてEndoH処理により糖鎖が切断されるか否かを観察したところ、パルスラベル後、24時間までEndoH感受性の高マンオース型であることが明らかとなった。この結果はリソゾーム酵素であるカテプシンDと同様であり、また、マウスフレンド細胞やラット胸腺細胞で、高マンノース型糖鎖から、複合型糖鎖へと修飾されることとは異なっており、カテプシンEにおいても糖鎖修飾の違いが細胞内輸送シグナルとして働いている可能性が強く示唆された。 3.以上の結果からラット腹腔マクロファージのカテプシンEはリソゾーム酵素であるカテプシンDと類似した生合成後の修飾を受けており、リソゾームへと輸送されている可能性が示されたので、このことを確認するために、液胞型H^+ATPase阻害剤であるbafilomycinA_1共存下でパルスチェイス実験を行った。この処理によってリソゾーム内のpHは上昇することが知られており、チェイス6時間後には殆どのカテプシンDはプロ型のまま細胞外へと分泌されるが、カテプシンEはカテプシンDと同様に殆どが細胞外に分泌されるものの、その一部は成熟型酵素と同じ位置にバンドが観察された。これら2種のプロテアーゼは酸性条件下において、自己触媒的に成熟型酵素へのプロセシングが生じることが知られているので、一部のカテプシンEは液胞型H^+ATPaseの作用によらない酸性化コンパートメント内でプロセシングが生じたと考えられる。すなわち、カテプシンEの輸送シグナルは、マクロファージにおいてもカテプシンDのような高マンノース型糖鎖の付加されたマンノース6リン酸がすべてではないことが示唆された。
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