研究概要 |
硬組織時刻描記剤として先に考案したethylenediamine-N,N'-di(methylene-phosphonic acid)(EDDPO)の硬組織細胞に対する毒性についてラットを用いて組織学的に比較検討した。 実験I EDDPOの骨細胞に対する影響の観察;無処理対照群と試験群はEDDPOの20,50,100,200mg/kgを背部皮下に10日間毎日投与し採血後屠殺した。パラホルムアルデヒドで固定後、脛骨近心端を非脱灰のままGMA樹脂包埋して薄切切片を作製し、H-E染色とALPase、AcPase、TRAcPaseの各酵素染色を施し光学顕微鏡で観察した。その結果、H-E染色では石灰化骨全体がヘマトキシリンに強染し時刻描記線は観察されなかった。200mg/kg投与群で骨端軟骨板の肥厚と骨梁表面に類骨の蓄積が観察された。上記3酵素の染色では各試験群とも対照群と変わらず強い酵素活性を示した。 実験II 切歯象牙質の基質形成に対するEDDPOの影響の検討;EDDPOを20,40,80,400mg/kgの用量で背部皮下に10日間毎日投与し無処理対照群とともに中性ホルマリンで灌流固定し、さらに5週間浸漬固定した。下顎骨を脱灰してパラフィン包理し薄切切片を作製してH-E染色を施した。切歯象牙質の10本の時刻描記線を画像解析装置に取り込み、基質形成量を描記線の間隔で計測した。その結果、無処理対照群は21.7mum/day、20mg/kg投与群では22.0mum/dayで有意差はなかった。しかし、40mg/kgと80mg/kg投与群ではそれぞれ20.1mum/day、20.2mum/dayとなり有意に低い値となった。400mg/kg投与群では組織所見上でも象牙質の形成障害が観察され、象牙質基質形成量も12.4mum/dayと顕著に低下した。 以上の結果から、硬組織時刻描記剤として用いるEDDPOの投与量20mg/kgでは骨の細胞に対する毒性は無く、象牙質の基質形成にも障害を与えないことが判明した。
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